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【カケラ Vol.05 試し読み】 ささやく講堂の秘密 ~ESP研究部の部日誌2~

空想工房


ささやく講堂の秘密 ~ESP研究部の部日誌2~



     ~零~
 少女は焦っていた。
『こんなはずではない』と言う思いが脳裏を駆け巡る。しかし、思いとは裏腹に言葉を発する事ができない。一筋の汗が頬をつたう。
(はやく! 続きを―何か話さないとダメ)
 しかし少女の口からは吐息しかでない。周りにいる人たちも少女の異変に気がついたのか、ざわめきはじめた。
「どうしたの、そこで下げでしょ! 早く! 噺が台無しよ」
 少女は、横から聞こえた声の方を向くが、黙って頭を振る。
(だめ……出てこないの? 下げが出てこない!)
 少女は何度か声を出そうと試みるが、何度やっても声は出ない。
「下がって!」
 舞台袖からの指示を受け、少女はざわめく人たちに一瞥して逃げる様に舞台袖に下がっていった。その場を取り繕うようにお囃子が流れる。
「おい! 途中で止めるなよ!」
「続きはどうしたんだ! それでも落研か!」
「最後までやれよ!」
「そうだ! 俺たちは噺が上手いと聞いたから、ここまで来たんだぞ、時間を返せ!」
 主役が去った舞台に向かって人々の罵声がたたみかける。座布団が容赦なく宙を舞う。
 少女は舞台の隅に耳をふさいでうずくまる。そこに一人の女性が話しかけた。
「どうしたの、あと少しだったじゃないの」
「――ごめんなさい。先生」
「普段のあなたなら何でもない演目なのに、どうして?」
「解りません。途中までは順調でした。ただ……」
「ただ?」
「客席の人たちが目に入ったら急に頭の中が真っ白になって、その後は言葉が出なくなったんです。高校生活でこれが最後の舞台だったのに」
 そう言って少女は泣き崩れた。



著者:杏烏龍 twitter/url



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創作サークル「空想工房」会誌・カケラ Vol.05

発行:2019/10/12
A5サイズ・92P
頒布価格:500円



 気になる続きは「カケラ Vol.05」でお楽しみください(^^)/

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Posted by空想工房

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